図書館の新刊コーナーで題記2冊を借りて、読んだ。
「約束の海」は山崎豊子の最期の作品として話題を呼んだ。3部構成の第1部が完成したが、後続の2部、3部はその構想をスタッフが20頁ほどの紹介文に纏めている。同作家で著名な「白い巨搭」では医学を、「華麗なる一族」は金融をテーマにしたが、今回は戦争と平和について作家生活の最後をくくる大作だったようで、期半ばに未完で終わったのが悔やまれる。第1部は序章で、自衛艦と遊漁船との衝突が描かれ、実際にあった横須賀港沖の海難事故を取材し、これをもとにした人間ドラマとなっている。以前に住んでいた市で起った事故でもあり、興味深く読めた。また、事故当日に予定されていた花火大会が中止となり、去りし日の思い出が交錯した。
「ジャーニー・ボーイ」は初めて読む作家の作品で、著者歴からして推理小説の類いかと想像した。題名のイメージとも異なり、内容は明治初頭の北関東/東北を舞台に英国婦人の画する日本紀行の取材を案内人側から描いたもので、「東海道中膝栗毛」が如くのドタバタ劇に推理小説を持ちこんだような構成となっている。チャンバラ活劇が藤沢周平を彷佛させて、楽しく読めた。