辻大悟「信長の笑み光秀の涙」を読んで

本のタイトル名に惹かれて読んでみた。そのストーリに触れると、どう書いてもネタバレとなるので、ここではなるべく控えるようにしたい。最初に出てくる僧が一体何者なのか要と知れず、じれったいほどの書きぶりだが、やがて物語の中核となって展開していくくだりは、まさに本を読む醍醐味だ。ところで、織田信長が本能寺で光秀の謀反と知ったときに言った「是非に及ばず」という言葉は余りにも有名だ。従来の解釈では「仕方がない」と言う諦めの説が一般だが、「何、光秀の謀叛らしいかと?(それが是か非か)本当かどうか、論ずるまでもない。即刻戦え!」と言う解釈もあるようだ。この本ではこの場面の解釈が力説してあって、「(光秀よ、お前は)全く間違っている」の意としていて面白い。この本は「本能寺の変」から15年経過した後の時代を描いた物語で、実在する人々を扱った歴史小説ながら筆者の独自解釈で書かれた面白いフィクションだ。

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