本作者、フォーサイスの本を読むのは3作目だ。まだ現役の作家で、今回読んだ小説が最新作の2014年発刊、前回読んだのが処女作の次に出た本で1974年作だ。初期と晩年の作品をこの1ヶ月内に読んだことになるが、両者の間に40年の差をあまり感じなかった。その時々の世情をよく反映した作品が臨場感をもって迫るのであろう。今回の最新作はイスラム原理主義のテロを扱ったものだが、単なるフィクションに留まらず、リアリティがそこかしこに見られた。やはり、作者本人の現場取材主義がここにもよく現れたかたちだ。スパイもののスリル感とテンポの良さで、この先どうなるかグイグイと引き寄せられて読み漁ってしまうのはさすが流行作家を読む醍醐味だ。題名の「キル・リスト」は体制側が非合法に殺害すべき人物をリスト化し、米大統領が最終判断して命令遂行する暗殺プログラムだ。いかにも現実にありえそうだが、訳者のあとがきではフォード大統領が初めて暗殺禁止令を出して以来、現在に至っているそうだ。だが、オバマ政権でも無人機によるテロリスト殺害は公然と行われていて、本作品を読むにつけ闇の世界が気になった。
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