この小説は薄くてボリュームが少なく、かつ平易で読み易い文章なので1日にして読めた。でも中身は充実していて、大変面白かった。読後に映画化されたことを知ったが、手にした本は文庫本で発行は今年の3月7日となっていたので、当初はこの文庫本は単行本からの再版と思った。ところがそうではないので驚いた。今、上映されている映画が原作の映画化ではつじつまが合わないからだ。どうやら作者は脚本家を生業としていて、携わった映画とは別にこれを小説化したようだ。しかも小説家としては処女作で、いきなり文庫本からのデビューなのだ。何もかも変わっていることに驚くとともに、文章の流れや切り替わりなどが映画のシナリオの如く感じたのが納得できた。どういう事情で今に至ったのか気になってネットで調べてみた。映画化は10年に及ぶ余曲折の末に完成したようで、映画化も数度挫折し、テレビ化の話もあったとのことだ。その都度、初期のものからは内容も変化し最後は有名な映画監督により映画化が果たされた。原作から携わり映画化の本来の目的を終えた所で、脚本家自らが小説にチャレンジして世に出したのがこの本のようだ。舞台は映画では富山県、小説では北海道となっており、そこだけでも連想するイメージが変わってくる。急遽、映画と小説ではどんな違いがあるのか興味が湧いてきたので、封切り中にでも観ようかと思っている。
Monthly photo – 2023.9
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