本書は評論家の長山靖生が芥川の作品の中から幻想ミステリの切り口で選んで後書きした短編集で、掲題の名で2018年末に出版された。先月6月に図書館の新刊コーナーでこれを見つけ、読んだ。この短編集は26編から構成されたおよそ1世紀前の著作で、現代仮名遣いで蘇った復刻版だ。自身の経験では、学生時代に芥川龍之介・全集を購入して一通り目を通した記憶があるが、今読み返してみて作品の半分も覚えていなかった。その分、懐かしさと新鮮さが入り混じった読み心地だった。芥川ならではの研ぎ澄まされた簡潔な文章で歯切れの良さに流石と思えば、恍惚とした美しさに酔ったり、神経質すぎる悪夢に埋没したり、おどけた寓話の世界に笑ったりと、芥川ワールドを堪能した。ただ、この短編26編をもって幻想ミステリ傑作集としたくだりが馴染めず、編者の独りよがりではないかと最後に苦言を呈したい。
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