本年1月発表の直木賞受賞作2作品のうち片方は2月に読み、残りの本作を遅ればせながら最近読んだ。時代設定は戦国から江戸時代初期で、山陰の石見(いわみ)銀山で暮らす人々の悲痛な物語だ。女性が主人公で、男まさりの生き様の中で焦がれる坑夫になりえずに坑夫たちを支える一生を綴っている。劣悪な鉱山の環境の中で人々がどのように暮らしたか、とりわけ労咳で苦しみ短命となって散っていく男性たちの悲運が浮き彫りとなっている。次々と襲う波乱のストーリーの中で当時の時代考証がしっかりなされた作風に、さながら歴史ドキュメンタリーを読んでいるような心地となって心に沁みた。直木賞受賞に相応しい作品に感じた。