小池真理子「千日のマリア」を読んで

この本は9年に亘って雑誌に掲載された8つの短編を纏めて今年2月に刊行された。恋・性・別れ・老い・死などをテーマに、そのほとんどが歪んだ男女の関係として描かれていて、独特な静寂とその景色の断片が色濃く漂う小池ワールドにどっぷり浸ることができる。ところが、美しく凛々しい文体が醸し出す数々の名場面に印象付けられたはずが、果たして読後には各タイトルを眺めて、一体どのようなストーリであったかほとんど思い出せない我が老化現象の悲哀を味わった。おまけに、表題の短編はしばらく読み進んだ後になって、かつて雑誌で読んでいたことに気づいて唖然とした。

カテゴリー: 読書 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。