石原慎太郎「海の家族」を読んで

石原慎太郎の最新作を読んだ。2015年の雑誌に発表された5作からなる短編を纏めた本だ。題材も文体も多彩でバラエティに富んでいるが、どれも暗く陰湿な感じだ。だが、表現がさらりとして尾を引かずオドロオドロしい場面の連続がスピード感を持って迫り、むしろ心地よささえ覚えた。現役作家ではもう最古参に達しているが、彼の描く世界はまだまだエネルギーに溢れていて歳を感じさせないのに驚いた。文壇から政界へ、そしてまた文壇へ返り咲き、リタイアなどはおよそ無縁な稀有な人種なのであろう。

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