山本一力「芝浜」を読んで

この暮れに来ての読書は何とも気ぜわしさが先立ったが、題目に惹かれて読んだ。落語の演題をネタに小説化した短編集で江戸時代の人情話が5話、納められている。最初の演題は有名な「芝浜」で、確か立川談志の最も得意としたネタだ。暮れの晦日の話が丁度、臨場感も増して面白そうだと、当初は思った。そして落語で何度も聞きストーリがわかっているものが小説では一体どう味わえるかとても興味があった。5話の全体を通して落語の真骨頂である笑いがどこにも感じられなかった。本を読んだ後に見る映画がつまらないのと同じようだった。落語のネタを小説にする難しさを筆者同様に痛感させられた。落語はやはり落語がいい。

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