「こころ」は漱石の代表作の一つだが、朝日新聞の連載を終えて、岩波書店で初版発刊した「こころ」が昨年で100年になり、これを記念して刊行された本を読んだ。ちょっとレトロ風の装丁で、歴史的仮名遣いを読みやすい書体で組みなおし、明らかな誤記もそのままとして、ルビも原稿通りに記載されたマニアックな本だ。遥か昔の中学時代に読んだ本だが、内容はすっかり忘れていて、果たして読んだことがあったか疑心暗鬼となり、物語が進むうちにナルホドこうだった、終末部分の謎解きでやっぱり読んでたわ、と変なところで納得した読書だった。全体的に暗く陰湿な物語だが、葛藤する人の心理が巧みに描かれ、さすが大文豪、圧倒的なエゴの世界に没入できた。数ヶ月前の新聞に、中高生に薦める先生が選ぶ名作の第1位がこの本で、「永遠の名作。誰にもあるエゴとの葛藤。10代のうちにぜひ読んでおくべき作品」などの評があった。まるで、青春本のような感じだが、老齢期になってもじっくり読み味わえる作品だと思う。
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