掲題の2冊、「chobo-zekka」と「Tokyo sightseeing」を読んだ。2冊とも短編集で併せて17篇からなるが、どの篇も関連のない単独のストーリだ。書きっぷりもエッセイ風のものから散文調、口語の羅列や二人芝居の話などなど様々で、これが同じ作家の作品か、と思うほどバラエティーに富んでいる。この作家は文章を巧みに紡ぎ、自在に作風を操ることのできる技巧派のようだ。読み易く一つひとつの作品は面白いのだが、あまりにバラけて一貫性がなく、読後の印象が薄いのも否めない。同じ作家の本をこの1ヶ月に4冊ほど読んだが、あと数冊読んでひと段落したいと思っている。
この作家の文章には足下にも及ばないが、眺望絶佳にちなんで先日の八方尾根スキー場への道すがらを以下にしたためたのでご笑読あれ。
「昨日までは悪天で近くの山すら見えなかった北方の視界は様変わりし、今朝は晴れ渡り天空には雲ひとつない爽やかさだ。無風ながらぐっと冷え込んで、大雪の去った北方の山々は一段とその白さを増した。昨日来のネット情報では又とないスキー日和になると報じている。高まる気持ちを抑えて、車を始動させた。目指すは八方尾根、日本有数のスキー場だ。積雪40cmの新雪が待っている。北への道は一般道ながら、長野オリンピックで整備された良好な道、眺望も格別だ。気持ちの高まりに増幅して山々の迫力も次第と増してくる。見やると、手前から爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳そして白馬三山と名峰がそろい踏みだ。眺望絶佳とはこのことか。そして目をこらすと気球が2基、ぽっかりと浮かんでいる。群青の空、白銀の山にマッチングしたまたとない光景だ。運転しながらも思わず、シャッターを切った。瞬時に映し出た液晶を見やって、驚いた。絶景の中に何と、場違いな高所クレーンがあったもんだ。刹那、さらに驚愕が襲いかかってきた。今、読んでいる本、「眺望絶佳」の表紙絵にも気球とクレーンがあった!」
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3月初めの読書投稿に引き続いて、数冊借りて読んだ。いとうせいこうの「存在しない小説」は題名からして難解で1週間程かけて読んだものの結局、解らずじまいだったので、読後感想も省くことにした。次に読んだ題記の本は前々回の読書投稿の「小さいおうち」と同じ作家の小説で、とても読み易く1日半で読み終えた。この「はなももみもも」はアパートの大家を主人公にしたその住人のバラエティに富んだお話だ。当初は市井の大衆小説の如くバカ話の様相だったが、のめり込むうちに日常の中に潜む大事なことや人生の機微が見えるようでなかなかの秀作だった。いままで女性作家の小説はあまり読んでこなかったが、女性ならではの文章くだりやタッチにも新鮮さを覚えた。しばらくハマってみようか、と思っている。




