恩田陸「蜂蜜と遠雷」を読んで

題記の本は本年度下期の直木賞受賞作で、発表直後に図書館予約し1ヶ月半ほど待機して先週、借り受けた。ピアノコンクールを題材にした音楽関係の内容で、上下段およそ500ページの分量はさすがに長く、読みながらいろんなことが頭をよぎった。架空のコンクールは実際には浜松国際ピアノコンクールを意識したものに思われ、1次から3次予選、本選の構成や舞台背景などが面白くイメージキャッチできた。登場人物の審査員にダブり、アルゲリッチや中村紘子などの顔も頭をよぎった。また、コンクールを通して幾多のピアノ作品が延々と紹介され、その解説は当を得ており、まるでピアノ鑑賞の入門書の体をなしていた。筆者の専門知識の豊富さとその表現力に驚いたが、実際にもピアノ経験者のようだ。ストーリはピアノ国際コンクールに参加した若者と審査員たちの心の触れ合いをテーマにした話でコンクールの臨場感をひしひしと感じながら読み終え、爽やかな余韻が残る秀作だった。

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