百田尚樹「幻庵」を読んで

この4月はアウトドア活動で読書から遠ざかったわけではないが、読むのに少し持て余したのが題記の本だ。上下巻のボリュームもさることながら、内容は江戸時代に活躍した囲碁士の世界をひたすら綴った歴史書だ。私は囲碁は全くやらないので、ルールを含めて何も知らなかったが、囲碁にまつわる多くを知った。本因坊なる名称の由来や名人位や家督がどのように形成され、囲碁士の対戦や生活がどうであったか納得した。当時の名局とされる碁譜が解説を交えて多く登場し、囲碁ファンならばよほど興奮して読めるに違いないと思った。囲碁に全く興味がない自分としては、少し醒めた気分で読み進めたが、面白かった点を幾つかあげると、

  • 将棋ならば、過去の棋譜の研究から進歩を遂げ、どんどん時代とともに強くなる世界だと思うが、囲碁はそうではないらしい。現在の最強プロでも江戸時代の某名人にはとても叶わないなどの表現があった。
  • 江戸時代の碁譜がこれほどまでに多く残されていることに驚いた。その名局の数々が今だ研究し尽くされていないことにさらに驚いた。
  • 囲碁は中国から平安時代の昔に伝わってきたが、江戸時代には幕府の肝いりで全盛を迎え当時は世界一の強さに相当したようだ。江戸時代の最強の碁譜が世界で研究され、今や中国や韓国が世界の覇権を握っているとのことだ。
  • チェスや将棋はかなり前にコンピュータソフトが世界制覇を果たしたが、囲碁はAIの力がなかなか発揮できないものらしい。しかしながら、ごく最近、やはりコンピュータが世界の覇者を打ち負かしたと、この本から知った。

私は将棋には興味があって、新聞の将棋欄を毎日のように目を通している。もし、この本の将棋版に相当する本が出たなら、図書館から借りずに個人購入したいと思っている。

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