前に読んだ本は曽野綾子の「人生の醍醐味」だったが、その本が今年6月に発刊されていて、今回の本は翌月の7月だった。「醍醐味」に連鎖して「死の準備」とはまた用意がよすぎると思った。しかも両者の本は出版社が異なるので、編集者があれこれ画策したのではなく、筆者自らが用意周到に準備したのだろう。掲題の本の構成は6章立てでおよそ120編ほどのエッセイを集めたものだが、いずれも死に関するもので随分とご執心な内容となっている。筆者の死生観がそのまま反映された本で、一貫した主張は「日本の教育は死を教えなさすぎていて、死の準備教育が必要だ」と言うことだ。しかもその教育は幼少の頃からの生涯教育にするべきだとしている。人は常に死と向き合った生活を送り、キーワードは「いつか必ず訪れる自分の死に備える」「あるものを失うことに備える」「いつ死んでもいい暮らし」「死んだ後への心づもり」と続く。私自身、この歳になると日々の会話の中でも「どっちが先に死ぬか」とか「健康寿命はもう残り少ない」など「死」についてが身近になった。この本に書いてあることはごもっともで、共感を覚えるとともに、最初は暗いイメージの本に思えたのが、ちょっぴり達観できて心穏やかな雰囲気が味わえた。最後に思うに、「人生、もうそう長くないのだ」。
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