ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q 檻の中の女」を読んで

本書は「特捜部Q」なるシリーズの第1作目の作品だ。著者はデンマーク人で、コペンハーゲンの警察官を主人公にデンマークを舞台にしたミステリーだ。デンマークと言えばアンデルセン童話や北欧の福祉国家のイメージがあって、従来から「牧歌的で大らかな国」に思われ、犯罪とは縁遠い印象を持っていた。しかし本書を読むとやはりそうではなく、犯罪のはびこる近代国家には相違なくて警察組織も万国共通の感がした。そもそもこの本を読むきっかけになったのは、先月、TBSラジオの「久米宏、ラジオなんですけど」で紹介され、欧米で大変人気のあるシリーズ物であることを聞いて興味を覚えた。実際には上下段450ページほどあって結構な長編だったが、適当にテンポがあって楽しく読めた。人気の所以は組織に馴染めぬハミ出し刑事の朴とつさ、相棒がおよそ部下とは無縁の仲で結ばれたはじけたコンビ、ユニークな犯罪を巧みに捉える物語、と言った感じだ。シリーズ第一弾ということで、主人公を取り巻く状況やお披露目的な紹介が多分に盛られていて伏線も面白い。この先、このシリーズものを是非、読みたくなる出来栄えだった。気になったのはデンマーク語から独語、そして和訳と二重訳となっているので、原語の持つニュアンスがどこまで活きているのか、読後の余韻の中でふと感じた。

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