司馬遼太郎「翔ぶが如く」を読んで

掲題の本をようやく読み終えた。読破に何と4ヶ月近くも要し、とにかく長かった。誰が主人公というのではなく、明治維新の10年間を史実に従い出典に触れながら詳細に綴った歴史書と言った感じだった。それにしても明治初期の10年間がこれほど劇的で凄まじい勢いで変革を遂げたことに驚いた。明治維新は幕末の封建制度が崩壊し文明開化にスイッチした新しい時代だと今まで捉えていたが、実際には旧態からなかなか脱皮できず激動の10年だったことを再認識した。士族のみならず農民を含めた大多数が江戸幕府の方に逆行したがっていたのは意外だった。とりわけ、この本を読んで認識を新たにしたのは、

  • 明治維新の3傑は西郷、大久保、木戸の三人で、はからずも三人とも明治10、11年の1年以内に亡くなった。
  • 西郷は封建制幕府を破壊しつくした最大の革命家だが、自他ともに封建思想を抹殺するほど苛烈な思想をもたず、むしろ晩年は武士魂を擁護した。権力欲、金欲はなく、清貧を好んだが、人から好かれることを欲する人望欲が強かった。
  • 木戸は明治首脳の中で最も開放的な立憲主義者で、理想家過ぎて晩年は政務から離れて高所から批判することを得意とした。
  • 大久保は明治維新の基礎を築いた一番の功労者で、実務派として諸策を断行するに専制主義の頂点に立って活動した。官僚国家建設の祖と言った感がした。
  • 西南戦争の勢力は反乱軍1万2千(補充含め延べ3万)、政府軍7万で、今まで薩摩側が負けるのは当然だと思っていたが、勝敗は微妙だったようだ。もし、明治10年の反乱ではなく2年ほど前だったり、あるいは実際の西南戦争でも戦略や戦術次第では勝機に持ち込めたようで、認識を改めた。

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