澤田瞳子「落花」を読んで

先ごろ発表となった直木賞で、今回ノミネートされた題記の本を読んだ。澤田瞳子の作品を読むのは「火定」以来の二作目で、「火定」も当時の直木賞候補作であり、この作家の実力が計り知れる。ストーリの中心は平将門の乱で、主人公はこれも実在した宇多天皇の孫にあたる仁和寺の僧である寛朝だ。寛朝はこの小説で初めて知った人物で、ネットで調べると「平将門が関東で反乱を起こした際には自ら関東に下向し祈祷をした。その時に祈祷した不動明王を本尊として創建されたのが『成田不動』で有名な成田山新勝寺である」とあった。実在する人物と実在する事件(乱)を追った小説だが、読んでみるとこれは全くの創作であって、歴史書ではないことが分かる。その分、いろんな解釈があって面白いのだが、戦闘場面の描写が生々しくおどろおどろしく感じた。伝記物や歴史書と違って、読後の充実感や爽やかさはなく、さりとてストーリに共感もできずに何となく消化不良の後味の悪さが残った。

安曇野の風 について

安曇野に巣くう極楽トンボ
カテゴリー: 読書 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。