河﨑秋子「絞め殺しの樹」を読んで

今般の直木賞候補作のうち3冊目を読んだ。何とも暗い内容の小説だ。2部構成で昭和10年代からの北海道・根室の大地を舞台に親子2代にわたる大河小説。第1部は身寄りのない少女が奉公先で過酷ないじめを受けながらも苦境を脱して保健婦として蘇るが、次々と苦難が襲い不遇な生涯を綴じる。第2部ではその息子が母と同じ境遇で今度は養子となって苦闘の日々を送り、負の連鎖が続く。終盤、運命に立ち向かう強さを見せて一筋の希望が描かれたのが唯一の救いだった。題名の“絞め殺しの樹”とは芯となる木に絡みつき締め付けて最後には枯らしてしまうという意味で、厳しい環境と複雑に絡まった息詰まる人間関係の中で全ての人がつぶしつぶされて生き、そして潰えることをテーマにした物語に感じた。

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