筆者は経済小説の大家で、この本は本人の幼年期のひと時を描いた自叙伝だ。この作家のファンであれば、目から鱗にして読むところだが、私にとっては初めての小説で、こんなものかと思った。両親が離婚して、孤児院で不遇な生活をした体験を綴っている。本人の努力で明るく振る舞い周りの人を惹きつけて温かく心が触れ合うのがこの本のキモのようだ。戦後間もない頃の貧困な時代により貧しい生活が強いられているが、とても健康的で何か遠い昔のノスタルジックな想いに駆られた。登場人物との触れ合いが生き生きと描かれる中で、主人公の賢さ、誠実さ、人懐こさが読者を惹きつける。が、自叙伝にしてはあまりに品行方正で出来過ぎくんに描いていて、著者本人は気恥ずかしくないのか、と思ってしまうのは私だけだろうか。
Monthly photo – 2023.9
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