題記の本を図書館の新刊コーナーで見つけ、借りて読んだ。新刊からして、数年前に亡くなった著名な数学者の執筆だろうと思って読み続けたが、全くの誤解だった。数学者は森毅、この本は1字違いの森敦で明治生まれで62歳にして芥川賞を取った、遅咲きの作家だった。平成元年に没したが、賞を取る直前まで、生涯の多くは放浪に明け暮れた。青春の若かりし頃は太宰治、壇一男の3人でタグを組んでデビューを競った時もあったようだ。前半は太宰のデビュー前の生活ぶりなども書かれていて面白かったが、圧倒されたのは後半の放浪記だ。長い放浪の間は特に作家活動をせずに凄まじいばかりの体験を繰り返したことを知り、この作家の独特な作風に合点がいった。実体験の凄さは説得力があって、面白エッセイ集だった。
Monthly photo – 2023.9
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