根本きこ「酒の肴、おいしい愉しみ」を読んで

ちょっと毛色の変わった本を読んだ。酒と肴にまつわるエッセイで、ページの半分は写真だ。おまけに最後の20頁ほどは本文に掲載された肴のレシピが事細かに書かれている。写真とレシピとくればジャンルは料理本と言ってもおかしくないが、やはりこの本はエッセイだと思う。著者はフードコーディネーターと言う経歴の女性で、この本には自分が経営するカフェ兼居酒屋のことが書かれている。美味い肴とお酒のある日々の暮らしを綴ったレシピ付エッセイなのだ。自分で作って食べて呑んで語る、周りの人との活き活きとした触れ合いもとても新鮮だ。文章は伸びやかで清々しいが、読後にちょっぴり侘しさを感じさせるのはなぜだろう。今の世は美食、飽食の時代にあって、この本に出てくる酒や肴はあまりにも飾りのない昔ながらの古さを感じさせていることかも知れない。現代のリッチさや贅沢とは無縁に、真心で作り出すことがベストだ、とこの本は言っているのだろう。ところでこの本の舞台は逗子・葉山で、執筆は2006年と少し古い。ブログ人は以前に葉山に住んでいたこともあって、もしこの店(店名「coya」)がまだ存続していたら是非、行ってみたいと思いネットで調べてみた。何と、2011年3月12日に原発事故から緊急避難するために店を閉店し、沖縄に移住したとあった。徹底した生き様に唖然とした。

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