池内紀「湯けむり行脚」を読んで

著者は日本のドイツ文学者で、温泉博士とも呼ばれてこれまで全国津々浦々の名湯秘湯を訪れて数々の温泉エッセイを著しているとのことだ。その中の1冊、題記の本を読んだ。温泉地の由来や温泉の効能が詳しく書かれているわけではなく、筆者がかつて訪れた全国各地の百余りの温泉地の雰囲気や感じたことを書いているエッセイ集だ。昔からの湯治湯や隠し湯の風情をノスタルジックに描いた温泉通向けの本に思えた。その中で、長野県では以下の12の温泉が紹介されている。本の中からキーワードを拾って列挙すると、

  • 田沢温泉(青木村)島崎藤村ゆかりの地、湯量豊富で近くに渓流。
  • 別所温泉(上田市)信州の鎌倉、三方を山に囲まれ肥沃な平野に美人の湯。
  • 高峰温泉(小諸市)標高2,000m、雲海の湯宿は9月には早、暖炉。
  • 小赤沢温泉(栄村)栄えてないのに栄村、信州と信濃の境いにあった境村が合併で栄村に。
  • 下諏訪温泉(下諏訪町)上諏訪温泉は近代ホテルが立ち並び、下諏訪は古い町並みで風情あり。
  • 渋温泉(山ノ内町)豪勢な湯が辻ごとに湯けむりをあげて流れ、下駄履きがよく似合う温泉。
  • 小瀬温泉(軽井沢町)軽井沢の奥座敷、地元観光課に問い合わせても馴染みがない程だが、とびきりの温泉。
  • 霊泉寺温泉(上田市)寺がさびれて温泉が残った。でも、やっぱしお寺さんの力で万病によし。
  • 小渋温泉(大鹿村)ただの山国でなく、日本最大の断層谷が走り山菜、いわな、鹿が絶品。
  • 葛温泉(大町市)山菜ざんまい、底冷えの体は熱湯で冷気が吹っ飛ぶ。
  • 崖の湯温泉(松本市)山の中で何もない、何もかも古風で山の景色は格別。
  • 山田温泉(高山村)泰然とした湯の里、数ある温泉の中でとりわけ秀抜な温泉の一つ。

この内、私の入った温泉は別所と葛温泉だけで、信州の温泉もまだまだ知らずじまいだ。

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