逢坂剛「平蔵の母」を読んで

掲題の本は鬼平犯科帳で知られた長谷川平蔵の活躍を描いた6篇からなる捕物帳だ。平蔵は火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)と言われる江戸時代の警察・防犯組織の長たる身分で、実在した人物であることを併せ知った。鬼平犯科帳は池波正太郎の代表作で未読だが、同じ人物を描いた本作の逢坂剛はだいぶ書きっぷりが違うようだ。読んでいてまず感じるのはハードボイルド・タッチの硬派でクールな雰囲気が随所にあって、けれんげないところが面白い。そして、平蔵は物語の現場にはおらず高所大所から差配や謎解きを的確にしていて実に爽快だ。絶対の信頼を置かれた上司、平蔵の配下に与力、同心、岡っ引き、手先が幾重にも存在し複雑に連携しながら機能する様は、ひょっとして江戸時代の警察組織の実際を垣間見る思いがした。色々と網羅されていて、充実の1冊だった。

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