題記の本は小川洋子とクラフトエヴィング商會とのコラボ作品で、5話の短編小説からなる。いずれも注文書、納品書、受領書という構成で描かれ、「注文書」と「受領書」が小川洋子、「納品書」がクラフトエヴィング商會が執筆担当し、各話ごとに写真や挿画も埋められている。1話毎に注文者の主人公が変わり、とても世の中には存在しないような物品を注文するが、受け側はクラフトエヴィング商會と言う場末の商店の設定で、そこから「納品書」が返送される。とてもユニークな構成でよく練られているが、この本が出来上がるまで足掛け9年にも及んだようだ。往復書簡のような特殊な作品となっていて、滑稽でファンタジック、でも何となく静謐で結末が腑に落ちて心安らぐと言った感じだ。当初、本のタイトルから「注文の多い料理店」の宮澤賢治を連想したが、まるで関係なく、5話のサブタイトルが有名作家の小説名であった。その一つ、「貧乏な叔母さん」は村上春樹の短編で1年ほど前に読んだのにすっかり忘れてしまっていて、本作を通じてその繋がりを思い起こされた。何とも情けなし。
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