村田沙耶香「コンビニ人間」を読んで

掲題の本は今年上半期の芥川賞受賞作だが、図書館の単行本は貸出し予約数が尋常ではないので断念し、同じ小説を全文掲載した雑誌を借りて、該当の小説を読んだ。さらりとした文章で読み易く、日常のとりわけコンビニの世界はこうなのだ、とその実態が余すことなく描写されていて面白かった。反面、コンビニ店員をさげすんだ見下ろし目線で描いていて、当初は反感を覚えた。「職業に貴賎はなし」とよく言われるが、小説の中ではさかんに「コンビニで働く人間」=「社会の底辺に巣喰う落伍者」のように扱われていて、途中放棄しようかと思った。しかし読了すると、実はこの作品の趣旨は、世間の人々が特定の人を普通ではなく「社会不適合者」とレッテルを貼ることに対するある種の異議申し立てをしているのではないか、と感じた。最後にコンビニ・アルバイターの主人公が自分のこれまでの生き方を強く肯定する描写に至り、軽いタッチの小説ながら結構重い内容であることに気づいた。

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