澤田瞳子「星落ちて、なお」を読んで

第165回(2021年上半期)直木賞にノミネートされた題記の小説を読んだ。読み始めたのが昨日、そして深夜の2時で一旦中断して今朝には読み終えた。怒涛の1日半、今こうしてブログ作成している夜半まで読後の余韻にどっぷり浸かっている。数日前から読み始めた今回の芥川賞・直木賞候補、いきなり直木賞の本命にぶち当たった感じがする。この作家、今回の直木賞ノミネートは実に5回目で、その分、私もこの作家の作品を読むチャンスが多く、いつもながらその力量に圧倒されてきた。でも、今回は今までで1番のインパクトがあって彼女の代表作の一つに加えてもよい感じがした。幕末から明治にかけて活躍した絵師、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)の娘、とよが絵師として葛藤する半生を描いた作品。書き下ろしではなく、一昨年7月から今年1月までの雑誌掲載を束ねたもので、巻末の参考資料四十余冊を踏まえながら代表作に匹敵するような作品に仕上げた凄さが本作に滲み出ている。表紙の挿画は主人公自身が描いた作品、単なる伝記を超えた生き様、人間模様、人生の機微に圧倒され、ぜひお勧めの1冊だ。

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くどうれいん「氷柱(つらら)の声」を読んで

第165回(2021年上半期)芥川賞にノミネートされた題記の小説を掲載雑誌「群像4月号」を通じて読んだ。雑誌のページ数にして約50頁、文体も読みやすくあっと言う間に読み終えた。主人公の高校時代から始まり、大学、社会人に至るまで、筆者と取り巻く人の生活模様が断片的に綴られている。その根幹をなすのが東日本大震災で、登場人物の心に深く刻まれた震災の体験が時の経過とともに少しも薄らぐことなくいつまでも深い影を残している様が描かれている。今も震災復興が継続的に行われているが、支援する或いは支援されると言った表面的な出来事ではなく、被災者の内なる心理が脈々と描かれ多くの人のその後の生き様が綴られ、その生々しさを再認識させられた。筆者は20代の若手で、普通だと文体やフィーリングに世代のギャップを感じることが多いのだが、本小説はそのような違和感はなくとても容易に読む側の心を捉えて純文学の香りも感じさせた。ただ、芥川賞を獲得するようなオーラは感じなかった。

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第165回芥川賞・直木賞候補の発表

昨日、題記の件で発表がありました。芥川賞、直木賞ともノミネートは各5作品です。本日、図書館に出かけノミネート作の一部を借り出してきました。各賞の受賞発表は2021年7月14日で、それまでに何冊読めるでしょうか。しばらくは読書三昧の日々となりそうです。

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麦刈り

今日の安曇野・穂高の最高気温は31.0℃で、今年初めての真夏日でした。すっかり夏モードです。家でじっとしていると、午後には我が家の目の前の麦畑にコンバインが現れて麦刈りが行われました。年中行事でもう馴染んできたとは言え、すっかり刈り取られた後は一抹の寂しさを感じます。昨年の種まき後の発芽、冬場の緑草、そして黄金の麦穂と半年以上も目の保養をさせてもらいました。以下、本日の麦刈りの儀式が終わると、いよいよ夏本番です。

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WWDC 2021

題記は米国Apple社の年1回の定期イベントで、今年の2021年ライブ配信を昨日の未明に見てしまいました。今年はハードの製品発表はなく、ソフトの新しいOSの紹介のみでした。それでもiPhoneのiOSをはじめ、最近新機種の出たiPad用のOSやMac OS、Watch OSに至るまで全てのOSの今年度改定の事前予告が発表されました。この秋に正式リリースされるようですが、世の中はどんどん進化していくのですね。Mac OSと言えば昨秋、数年ぶりに大幅改定されたBig Surに私は未だアップグレードしていないにも拘らず、今秋には更に大幅改訂して Mac OS Montereyとなるようです。Apple社のいずれのOSも無償配布ですが、馴染む前にどんどん先に行ってしまう感じでどうしたものでしょう。単に歳をとってしまっただけとは思えないのですが..。Mac本体のほか、iPhone、Apple Watchユーザーですが、Macはしばらく様子を見て今秋にBig Surを飛び越して、新OSに乗り換えてはどうか、と思ったりしています。

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ラ・カンパネラ(追伸)

昨日から引き続いての追記です。この動画を初めて再生した時を振り返ると、

1番目に登場したトップバッターにど肝を抜かれる。あまりに指の長いこと、私の1.5倍はあろうか、これなら1オクターブの連打など自由自在。ガリバー・小人の国ならぬ西洋の魔女がスタンウェイの箱をいとも簡単にかき鳴らして目に鱗だ。

2番目はよく知るランラン。超絶技巧曲も余裕サクサクで、左手などはオーバーアクションで観衆に媚を売るがごとく。作曲者リストを小バカにしているようにも思えてきた。

3番目はモノクロ映像となり、リストのそもそも原曲とはを説明するが如く古今問題を紐解く感じだ。リストご本人とは体形も違う感じだけど古を思い出させるような雰囲気だ。

4番目が韓国のショパン・コンクール優勝者。トップバッターと同じように背後にオーケストラを抱えていて、コンサートを終えた後のアンコール曲のようだ。最後の付け足し、そしてビッグイベントをやり終えた安堵感の直後に、超絶技巧曲で締めくくる凄さは立派。

5番目は若手のホープが淡々と弾く感じで、静謐さがあふれショパンの曲を聴くような感覚だ。爽やかなカンパネラに脱帽!

6番目は中国人初のショパン・コンクール優勝者、アジア人としても当時2人目。感情のこもった熱演がひしひしと伝わり、聴いていてゾクゾクする興奮を覚えた。熱情だけではなく静寂から爆発までの弾きこなし感が半端でなく、正にブラボー!

7番目は打って変わって冷静そのもの。正確さもピカイチで、これ以上ないクールなカンパネラだ。

8番目はカンパネラの大御所。独特の間合い、テンポは円熟の極地と言った感じ。カンパネラとはこうだよ、と諭すような弾き語りに引き込まれて酔いしれる余裕さえ与えてもらった感覚を彷徨えた。

9番目のラストは日本人の辻井氏。最後で最高に盛り上がるのではの期待が大きすぎて負の伝達となって萎んでしまったのは私だけだろうか。誘引したのはあまりに同じ曲を聴きすぎてきて飽和状態のToo muchか、はたまたなぜかこの動画だけ観衆のシーンに世界の要人が出てきて白けてしまった感がする。ご本人の演奏の素晴らしさが諸条件で損なわれた感じで残念

いやぁ〜同じ曲を通して聴くことの幸運、興奮、感激、そして疲労と何とも充実しきった時間でした。

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ラ・カンパネラ、9人聴き比べ

題記のYouTube動画を最近見つけました。ご存知、リスト作曲の超絶技巧ピアノ曲で、これを9人のピアニストを一堂に介して聴き比べるものです。右の画像にリンクを貼りましたので、まずはクリックしてみてください。私はこの1月ほど、イヤホンやヘッドホンでこの動画を再生してきました。でもいまひとつ迫力がないので、今日はスマホの動画をテレビに映し出し、オーディオセットにデジタル出力して、コンサートホール並の雰囲気でじっくり試聴して見ました。9人全員が世界をリードするピアニストでその演奏は素晴らしく、批評めいたコメントは全くの場違いですが、敢えて私情を交えた感想を下記したいと思います。一応、左下の画像や演奏者名をクリックすると、各ピアニストの演奏に動画がジャンプするように設定しました。以下、簡単な来歴と聴き比べの独断寸評です。

No.1 ヴァレンティーナ・リシッツァ
ウクライナ生まれ。YouTube投稿を機にアマゾンでの売上が急増し、世界的な名声を得る。

繊細の中にも歯切れがよく、強弱が自然で優雅。
No.2 ラン・ラン
オーケストラとの共演で売れっ子の中国人ピアニスト。

1音づつ置いた感じの調べが機械的な演奏に聞こえ、オーバーアクションが如何にも物見世的だ。
No.3 ジョルジュ・シフラ
ハンガリー出身。超絶技巧派で名高く、リストの再来と呼ばれた。

作曲家「リスト」の時代を彷彿させるような古さで、より原曲に近い演奏のようにも思える。
No.4 チョ・ソンジン
ショパン国際ピアノコンクールで優勝、圧倒的な才能と生来の音楽性を持つ韓国人ピアニスト。

柔らかく丁寧な演奏で、外向きに攻めるのではなく内面をえぐるように次第に盛り上げていくのが凄い。
No.5 ダニール・トリフォノフ
ロシア生まれ。ショパン国際ピアノコンクールで3位、チャイコフスキー国際コンクールで優勝の実力派。

ショパン的な詩的情緒に溢れ、飾らないところが爽やかで好感。
No.6 ユンディ・リ
ショパン5年毎の国際ピアノコンクールで連続途絶えていた第1位を15年ぶりに獲得し、注目を浴びた中国人ピアニスト。

ナチュラルな表現がとても魅力的、次第に感情移入していくがアクがなく返って爽やかな感じ。
No.7 ドミトリー・シシキン
ロシア生まれ。 チャイコフスキー国際コンクールで2位、若手期待のピアニスト。

優等生的正確さ、ある種のクールさがほとばしる感じがする。
No.8 フジコ・ヘミング
スウェーデン国籍で母は日本人ピアニスト、父はスウェーデン人画家。聴力障害に生涯悩みながらも活躍。

ややスローテンポが細部を明らかに物語るようで、さすが円熟したカンパネラの大御所を感じさせる。
No.9 辻井伸行
1988年生まれのピアニスト兼作曲家。

高音を抑え気味で、強弱を随所に付けてやや説明的な感じ。インスピレーションが湧かず、ちょっと評価が難しい。

この動画の一般の方からのコメントでは、多くの人がNo.8とNo.9に好みが集中しているようです。私の好みでは、1番がNo.6のユンディ・リ、そして2番はNo.1 のヴァレンティーナ・リシッツァとなりましょうか。こうして世界のTopアーティストを好き勝手に批評したりできるのもこの細々とした当ブログありきで、一人悦に浸って楽しんだりしております。では、また。

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「小川洋子の陶酔短篇箱」を読んで

小川洋子が選んだ16篇からなる短編集で、各編とも彼女の解説エッセイが付いている。収録された短編は半分以上が名前も知らない作者で時期も明治から平成まで、私小説から幻想的作品までバラエティに富んでいる。どのような基準で選んだのかよくわからないが、共通して言えそうなのが「動物」、生き物たちの活躍だ。時空も場所も違う短編に次々といろんな生き物たちが登場し、何だかよくわからないうちに玉手箱の中のようにそれぞれが生き生きと馴染んできた感がした。そして読み終えたときの小川洋子の解説エッセイがよい。彼女の陶酔具合がひしひしと伝わってきた。何やらこの「短篇箱」は2篇目で、”陶酔”の前に”偏愛”もあることを知り、また楽しみが増えた。

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玉ねぎ収穫

今日の話題はうちのオバはんからの借り物ネタです。今時分は菜園の玉ねぎの収穫時期で、下の写真はその様子を数日に分けて撮ったものです。写真左から今週初めに引き抜いて並べたところで、数日間、畑で天日干ししました。その後、ガレージの一角に取り込んだのが真ん中の写真、そして本日竿にぶら下げたのが右の写真です。今年の玉ねぎはその数は100個を超え、とても大きく成長して大豊作です。これからおそらく年内はオバはんの玉ねぎで賄うことができ、家計簿にもやさしく嬉しい限りです。また、しばらくはシャキシャキ・サラダや丸ごと玉ねぎのレンジ・チンしたレシピなど今ならではの新鮮さが味わえて、オバはん様さまです。

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エリック・シュミット「マダム・ピリンスカとショパンの秘密」を読んで

筆者のフルネームはエリック・エマニュエル・シュミットで、ミドルネームを記さないとGoogle社の創設者の方を連想してしまうが、本書の作者は仏人で現代フランスを代表する劇作家のようだ。図書館の新刊コーナーで見つけ、題名と出版社が音楽之友社、そして訳者がパリに在住する現役のピアニストであるのも気になって借りてみた。どうやら筆者はアマチュア・ピアニストとしても有名で、本書は自身の半自伝的小説のようだ。若い頃にピアノの指導をしてもらったマダムとの交流が描かれているが、このマダム・ピリンスカは実在人物ではなく架空の人らしい。どうして自伝小説なのかよくわからないが、音楽に傾注し特にピアノに関わる自身の主張が随所に感じられた。ショパンが如何にピアノの果てしない世界だけを一途に追い求めていたのか、他の作曲家との違いが浮き彫りにされたことを実感した。いつしか物語に引き込まれ、音楽のみならず人生観や世界観までテーマが拡張していることに驚いた。120頁ほどの短い小説ながら充足した読後に浸れた。脱線するが、先日記した「チャルダッシュ」は無数の楽器でこなされ、私の好きなバッハの「ゴルトベルク変奏曲」やモーツァルト「トルコ行進曲」などはアンサンブルで演奏されたりもする。でも、ショパンの曲はピアノ以外で演奏されることはまずないのも本書からうなずけた。

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