今般の直木賞候補の一つだった題記の本を読んだ。ジャンルは警察サスペンスのようだが、スリルや謎解きの部分はなく戦後間もない頃の事件捜査がコミカルに描かれていて、痛快だ。そして何よりも時代設定が終戦直後の政治・社会情勢の史実をあますことなく浮き彫りにしていて、歴史小説を読む思いがした。また、戦中の悪名高き特高警察のイメージから脱却して戦後の民主警察に至る過程がいかに大変であったかをあらためて知った。自分の生まれた頃の世の中がどれほどに混沌としていたか、今にして大いに興味が湧いた。ストーリー展開はよく練られていて、読み進むほどペースが上がって面白かった。歴史小説の如きながら、面白さは抜群でまさにエンタメ小説の代表格のような思いがしたのは多分に、大阪弁のオンパレードからくる所業かも知れない。
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